都内最下位(崖っぷち)からの改善・挑戦!〜野菜を沢山食べて、健康長寿の街に!足立区「ベジタベライフ事業」「ベジファースト事業」

6月13日、足立区の「おいしい給食PJ」の視察とともに、「ベジタベライフ」「ベジファースト」事業の視察をしました。足立区では、平均寿命、健康寿命など区民の健康を表すデータが「都内最下位」という最悪の結果となりました。これを改善する為、区民の食事の問題や血糖値(&ヘモグロビンA1c)の高さやそこから派生する糖尿病の罹患率の高さに着目し、野菜接収の習慣を推進して健康改善を図る「ベジタベライフ」や「ベジファースト」事業に取り組み、大きな効果を得ています。野菜接収を習慣化するプログラムは、足立区の給食PJの中でも取り組まれています

 

 

 

  • 都内最下位の健康数値

 

<足立区の健康課題>

○  平均寿命が東京都平均より約2歳短い

○  一人当たりの糖尿病医療費・受診件数が23区で最も高い

○  糖尿病が国保医療費の上位を占める(肝不全、糖尿病など)

○  糖尿病の肝透析に至る割合が東京都平均を上回っている

○  健康無関心層が少なからず存在し、糖尿病が重症化するまで放置する傾向がある

 

<具体的数値>H24時点

東京都平均 足立区 23区内順位
平均寿命 78.33歳(男性) 76.36歳(男性) 最下位(23位)
一人当・糖尿病医療費 967円 1,150円 最下位(23位)
一人当・糖尿病受診件数 40.13件 47.31件 最下位(23位)

 

 

 

  • 足立区の健康課題を解決するために

 

政策を実行する「アクションプラン」制定にあたり、足立区民の健康状態や意識調査を精査すると、上記のような問題点が浮かび上がりました。これを分析し、足立区では糖尿病対策に絞って、集中的な対策を取ることにしました。

 

糖尿病は合併症を引き起こすだけでなく、肝不全などが重症化すると、人工透析など高額な治療が必要になります。また、就労不能となった低所得者の多くは生活保護を受けざるを得なくなり、足立区が財政的な援助を続けることになります。また、若いときに重い糖尿病になってしまうと、将来にわたって発生する医療や介護費用も膨大になります。区民の糖尿病の悪化を放置しておけば、区の財政が逼迫するのは必須である。という点が、「糖尿病・改善」の一点突破に絞った理由の1つです。

 

今まで、国が提唱する施策にのっとって、生活習慣病を対象にした様々な対策を講じました。がしかし、総花的だった為、区民の健康状態はさほど改善しなかった。という点も一点突破の政策に切り替えた理由です。

 

 

 

 

  • 糖尿病と野菜摂取

 

「糖尿病」の中でも、生活習慣病とされる「2型糖尿病」は、カロリーの取りすぎや運動不足が原因と言われています。栄養面のバランス改善には野菜を多く摂取する事が推奨されています。野菜に含まれているカリウムは、食塩に含まれるナトリウムを排斥する効果がある事から、塩分制限を必要とする高血圧の人にすすめられます。また、脂質異常症(高脂血症)やコレステロール値が高い人は、野菜繊維を沢山摂取する事で、脂の吸収を抑える事が出来るなど、様々な面で野菜の効果がわかってきています。

くわえて、野菜を最初に食べれば血糖値の急激な上昇が抑えられるので、高血糖状態による血管の損傷を予防出来ることもわかっています。これを受けて、足立区では食事の最初に野菜を食べる「ベジファースト」を推進しています

 

 

 

  • あだちベジタベライフの戦略〜3つの基本方針

 

この分析から、誰もが健康長寿にたどりつける足立区の「3つの取組み」を定めました。

基本方針1:野菜を食べやすい環境づくり

基本方針2:子どもの頃から良い生活習慣の定着

基本方針3:重症化予防

 

 

 

  • 基本戦略1:野菜を食べやすい環境づくり

 

<ベジタベライフ協力店の展開>

「ベジファースト」や「野菜たっぷり」メニューを約827店舗の飲食店で提供しています。また、スーパーや青果店、北足立市場、JA足立、地元の足立成和信用金庫との協力事業やイベント開催をしています

 

<ベジタベ×おいしい給食deちょい増し野菜>

令和4年6月の食育月間では、「おいしい給食PJ」とコラボ事業や、セブンイレブンとの連携企画(サラダメニューの販売)や、大手企業×足立区の野菜摂取啓発の企画や広報が積極的に行われています

協力企業:セブン&アイグループ、キューピー、すかいらーく、ブロンコビリー、日高屋、大戸屋、北千住マルイ など

 

足立区の最新の広報でも「野菜」の取組が

 

 

 

  • 基本戦略2:子どもの頃からの良い生活習慣の定着

 

「中学校3年生までの食生活が未来の自分を守る!」を合言葉に、子どもの頃から中学卒業までに望ましい食習慣を身につけ、将来の健康につなげる「あだち 食のスタンダード」(3つの実践力)が行われています

 

<実践力1:ベジファースト>

小・中学校の「おいしい給食PJ」の食育として、「野菜を食べよう!野菜から食べよう!」を目標に、「ひと口目は野菜から」という食育・指導が行われています。また、給食で「野菜の日」も設定されています

 

<実践力2:栄養バランスの良い食事を選択できる>

中学校で「自分で献立を考えよう!」を目標に、3日分の栄養バランスの良い献立を立てる学習(食育)が行われています

 

<実践力3:簡単な料理を作ることができる>

小・中学校で「自分で調理をしよう!」を目標に、簡単な料理を、中学校卒業時までに全員が作くれるようにする学習(食育)が行われています。簡単な料理→①ごはんが炊ける、②インスタントに頼らずみそ汁が作れる、③目玉焼き程度のフライパン料理をつくる事ができる

 

 

 

 

  • 基本戦略3:重症化予防

 

○  「スマホdeドック」の実施(自宅で健康状態チェック)

○  薬局(区内13薬局)店頭でのヘモグロビンA1c測定

○  40歳前の健康づくり検診(非正規の方や子育て中の主婦も対象)

○  保健師による家庭訪問(40、50代の糖尿病未治療への個別指導)

 

 

 

 

  • 見え始めた成果
成果1:野菜から食べる効果を知っている区民が8割まで増加。認知が行動

に変わっている事が確認されている

成果2:小・中学校の給食・総残菜量が減少

成果3:他都市と比べて、子どもの野菜摂取量が増加

成果4:ベジタベライフの取組みが健康意識と行動に良い影響を与えている

(例:習慣的にタバコを吸う人の割合低下、毎年健康診断を受けてい

る人の割合増加)

成果5:健康寿命が延伸し、都平均との差が縮小

成果6:「第6回 厚生労働省・健康局長」優秀賞を受賞

成果7:OECDレポートで「世界最高水準」の取組みと高評価

成果8:糖尿病の1人当たり治療費:23区最下位→下から7番目に

 

 

 

 

  • まとめ(横浜市でも健康PJの展開を)

 

貧困と健康には相関があると言われています。が、その詳細理由までは解明されていません。がしかし、ジャンクフードやスナック菓子、コーラといった高カロリーの食生活・習慣が、糖尿病を誘発し、健康寿命や平均寿命に大きく影響している。と考えられます。これを改善し、生活習慣病リスクを軽減する為に、足立区では「ベジタベライフ」や「ベジファースト」といった、一点突破の政策を推進しています。これが目に見える効果を上げています。

 

健康を維持する為の政策については、横浜市でも抜本的な見直しが必要です。「総花的」な取組は市民に伝わりづらく、結果として改善行動に繋がりません。取組みを見直し、足立区のような「尖った」政策の取組みが必要です。

 

直近の全国・平均寿命調査(R2)で、横浜市・青葉区・男性は83.9歳と全国2位を獲得しています。一方で、中区・男性は79.5歳で、全国1,834位と全国でも最下位グループとなっています。同じ市内でありながら青葉区と中区では、何と平均寿命4.4歳の差が開いています。

 

健康プログラムを、横浜市全域で一気に入れることは、中々難しいかもしれません。が、平均寿命や健康定命のデータを詳細に分析し、数値が低い地域や、団地などを中心に健康改善プログラムを投入する「選択と集中」の戦略的取組み。横浜市でも取組むべきであると、提案していきます。