日本のコロナ対応はここから始まった〜ダイヤモンド・プリンセスの横浜港着岸とアウトブレーク

 

1.      ダイヤモンド・プリンセス号着岸

2.      コロナ患者の発生(アウトブレーク)

3.      未知のウィルスで現場は混乱

4.      横浜市の対応〜健康福祉局・F氏の話

5.      その後、国内で起こった問題(医療現場の逼迫、給付金の問題など)

6.      横浜市のワクチン接種

7.      まとめ(まだ続いている、総括・検証・振返りが必要)

 

 

❏ダイヤモンド・プリンセス号着岸

2019年12月、中国湖北省武漢で発見された新型コロナウィルス。この未知のウィルスが世界中に蔓延。(2021年4月時点で)世界中で1.32億円が感染し、287万人が死亡。緊急事態宣言が発令され、世界中の社会・経済を巻き込んだ「パンデミック」となっています。

武漢でのコロナ発生の翌年、2020年2月3日に大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」が横浜港に着岸。日本国内では、我々のまち横浜から、コロナウィルス感染の驚異への対応が始まりました。

 

 

 

❏コロナ患者の発生(アウトブレーク)

香港で下船した男性の感染が判明したのは2020年2月1日以降、事態は急変。厚生労働省は2月3日夜に横浜沖に着いた船をそのまま停泊させ、2週間の隔離と船内検疫を実施。しかし、閉じられた空間の中で未知のウィルスは急激に蔓延。ダイヤモンド・プリンセス号では50超の国の乗客乗員3,711人のうち、712人(19.2%)がコロナウィルスに感染し13人が死亡しました。未知のウィルスのアウトブレークが、我々の住んでいる街の目と鼻の先で起きたわけです。

 

 

 

❏未知のウィルスで現場は混乱

1年前のこの当時、どんな性質のウィルスなのか、そして、どう対処すべきなのか誰にもわかりませんでした。「感染法」なのか「検疫法」なのか?どの法律を適用し対応すべきかも当初はあいまい。そもそも誰が、この問題に責任を持って対応するのか?厚生労働省なのか?神奈川県なのか?横浜市なのか?船会社の責任なのか?

感染患者が指数関数的に増え、日々状況が変わる中、現場は大変混乱しました。

レッドゾーン(危険地区)、グリーンゾーン(安全地区)など船内のゾーニング徹底の不備。長期間の隔離で薬が切れ、追加で処方依頼した薬が、医務室での仕分けが追いつかず、1人1人の手に届かない、という事態も発生しています。

 

 

 

❏横浜市の対応〜健康福祉局・F氏の話

2021年3月27日、1年経過したこの問題をふり返るオンライン・セミナーが開催され出席しました。コロナ対応やワクチン接種の準備などで現場は大変忙しい為、私が現場の方の話を事前に電話で伺い、その内容をオンライン・セミナーでお話させて頂きました。

 

横浜市・健康福祉局・F氏

話を聞いたのは横浜市でこの問題を対応した健康福祉局・保健所所管のFさんです。以下、Fさんの話↓

2月5日の夜中2時に(県から)電話がかかって来ました。「この日の朝7時に陽性患者10名を降ろすので、救急車の手配をして欲しい。また、追加で救急車に同乗するお医者さんを手配して欲しい。」という要望です。

電話を受けた時間から、未知のウィルスに対応できる病院・医者の手配に奔走。が、当日はダイヤモンド・プリンセス号の上空に取材のヘリが数機飛び、岸にも取材陣が詰めかける騒然とした状況。患者は「戦場のようなそんな場所に降りたくない」と下船をためらいました。急遽調達した青色のビニールシートで通路を覆い、ようやく午後1時に1名搬送(本来は朝から搬送予定でしたが)。

その後も現場の混乱は継続。岸から離れた船の中は国・県の所管で、横浜市の所管は着眼した岸から。船(国・県)からは全然情報が来ない中でも、問い合わせは横浜市に殺到。情報がない中でも対応・答えを求められ、板挟みになり、大きなストレスとなった。「外国人の医療費や検査はどうするのか?」「感染患者だけでなく、心筋梗塞の人はどうするのか?」など。陽性患者が急増し、どんどん入院患者が増え、市内の色々な病院への連絡・手配など、日中だけでなく、夜中の突然の電話が続きました。

 

当初はコロナウィルスの特性が全然わかりませんでした。ので、仕方がない部分もあります。が、国の通達や方針が1週間で変わる「朝令暮改」の状況で、現場は大変混乱。「他の(小さな)自治体だったら、おそらく対応出来なかっただろう」というのが現場の意見です。

 

横浜市・医療局では、「ダイヤモンド・プリンセス・神奈川県対策本部」に人員を派遣。入院患者の調整、特に遠くに運べない重症患者を横浜市内の病院へ手配しました。横浜市内・神奈川県内の病院キャパシティでは対応しきれず、神奈川県外の病院に搬送された陽性患者の方も多数います。

 

急増した患者の病院の手配・搬送が、神奈川県の「神奈川モデル」に繋がり、横浜市ではY−CERT(新規入院患者調整組織)の立上げに繋がっています。横浜市のY−CERTは2020年4月5日に発足し、横浜市民を中心に、重症化した患者の急性期病院への搬送や、病床の空きを確認・調整を行う機能を担っています。

Y- CERTは2021年1月のピーク時で20名、現在(2021年3月時点)は6名体制で対応しています。

 

 

 

その後、国内で起こった問題(医療現場の逼迫、給付金の問題など)

第1波、第2波、第3波と上限を繰り返しながら日本国内、横浜市内で感染が拡がりました。横浜市内では、2021年3月24日時点で1日あたりの陽性者44人。ピーク時は542人/日まで増加しています。

この間、「マスクが足りない」「アベノマスクの配布」「一律給付金10万円が届かない」「医療現場の逼迫」「相談窓口の電話が繋がらない」など様々な問題が発生しました。

緊急事態宣言が発令され、学校休校、外出自粛、テレワークなど私達の日常生活が一変しました。横浜市では、庁内IT体制の不備で「リモートワークが出来ない」という事態も発生しています。

 

異例の長期対応となった為、健康福祉局・医療局の現場職員は連日残業、休日出勤。大きな負担を強いられました。また、市民病院などの医療現場や、エッセンシャルワーカーの皆様は、近所や保育園、小学校など自身の地域などで、いわれのない風評被害に耐えなければいけない、という辛い経験をしたと聞いています。

 

2月〜3月に行われた議会の予算特別委員会で、「健康福祉局」と「医療局」の質疑は、現場の負担を考慮し、急遽「文書質問」(文書での質問・回答で、実際の委員会での質疑は行わない形式)となっています。

 

 

 

❏横浜市のワクチン接種

この状況の中、求められるのは「ワクチンの接種」です。横浜市民375万人の内、高齢者93万人から接種が始まります。市内19ヶ所、1日あたり8,100回のペースでの集団接種を、5月17日の週から開始します。予約の為の個別通知は4月下旬から発送。55名体制で対応にあたり、状況に応じて増員を計画しています。

(詳細は、週1のペースで更新している「新型コロナウィルスのワクチン接種について」(直近更新2021年4月8日)を御覧ください↓)

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/yobosesshu/vaccine/vaccine-01.html

 

  • 尚、国からのワクチン供給情報を踏まえて対応する為、予定が変更になる可能性がある事をご了承ください

 

 

 

❏まとめ(まだ続いている、総括・検証・振返りが必要)

この問題は、細菌(ウィルス)や医療だけの問題ではなく、「リスク・コミュニケーション」や「危機対応・体制」の問題です。ダイヤモンド・プリンセス号の対応にあたった現場の方からは、「問題を検証し、総括して欲しい」という言葉を頂きました。関係者の中には「思い出したくない」「話をしたくない」という人も確かにいると思います。がしかし、人々の記憶が風化する前に、ダイヤモンド・プリンセス号の船上(戦場?)で起きた事実の検証を行い、「何が問題だったのか?」を洗い出し、報告書として記録する事が必要と考えます。

発生した規模と影響を考えると、「横浜市が単独で」というよりは、「国」の単位での調査・検証・報告が必要です。

 

「忙しくてそんな対応出来ない」「一生懸命対応した。蒸し返して、何で色々指摘されなければいけないんだ?」という声も確かにあります。しかし、一旦立ち止まり「検証・総括・振返り」をしなければ、「何が悪かったのか?」「その教訓を今後の対応にどう活かすべきか?」という事がはっきりしません。

 

2020年の2月にダイヤモンド・プリンセス号の船上で局地的に起こった事が、今、国内のあらゆる所で起きている。この問題はまだ続いている、と考えるからです。